2016年12月14日水曜日

これぞ[勉強]!!

授業の前に、生徒が電話を掛けてきました。
と言っても、最初はその生徒だとは分からなかったのです。

「はい、もしもし粟谷塾です。」
「…。」

返事が有りません。

「もしもし、もしもし、もーしもーし!」

すると、小さな暗い声が聞こえてきました。

「・・・高杉晋作、江藤新平、山岡鉄舟、杉原千畝、犬養毅、山口尚芳、池田長発(ながおき)、ジャン・フレデリック・バジール・・・」

歴史上の人物の名前が小声で延々と続きます。
その生徒が最近気に入っている印象派画家のバジールが出たので、その生徒だ、と確かめられましたが、何なんでしょう、この不気味な電話は^^;

「・・・について、一人1ページに纏めて・・・」

ん?そう云う宿題が学校から出された、と言うのか?
いや、バジールとか、池田長発(ながおき、幕末第二次遣欧使節団団長、昔のイケメン)とかの事を纏めろ、なんて小学校の宿題では出ないよな…。

「・・・ノートに書いたんですよ!」
「誰が?」
「僕がです!」
「…は!?」


その生徒は、長い間、“書く事”を億劫がって、1文字でもなかなか書きたがらなかった子なのです。
それが突然、そんなに多くの歴史上の人物のレポートを書いたとは!

生徒は、電話ででも授業ででも、自分がどの人物の事をどのように書いたか、熱く嬉しそうに話してくれました。
「[勉強]が楽しくて仕方が無い。」と言うのです。
自分の[学力]を発揮する楽しさ、自分の知の世界が出来ていく楽しさですね。
それで、生徒は、その自作歴史人物事典を、登校前と学校の休み時間、下校後と就寝前に書いているのだそうです。
つまり、空き時間のほぼ全てを費やしている、と云う訳です。
それが「楽しい!」と云う事ですね!
楽しければ、時間を忘れて没頭します。
そう云う[勉強]は、楽しさにおいて、本人にとっては、実質“遊び”です。
これぞ[勉強」なのです!


唯、私が生徒に忘れてほしくないのは、自分一人の力でここまで伸びてきたのではない、と云う事です。
フランドールのMちゃんを初め、クレオパトラのAちゃん、ずっと見守ってくれたI君やT君と云ったお姉さんお兄さん達が居なければ、今の自分は居なかったのです。
その事を忘れてほしくない、と思います。
彼らが居てくれたお陰で、一段一段階段を登るように、自分の精神を強くしてきたのです。

勿論、彼らは、意識的にそうしてくれた訳ではないでしょう。
しかし、彼らがどうであれ、自分は恩恵を受けたのだから、感謝の気持ちを持つ事が出来ますし、そうする方が良い、と私は考えます。
なぜなら、そうすれば、自分の力の産物ではない物まで自分の力の産物だと思い違いをするのを避ける助けになるからです。
それは、延いては、[自信]と慢心・自惚れを取り違えたり自分の能力を過大に見たりして、後で現実世界との間に齟齬を来たす愚を避ける事に繋がります。
また、なぜなら、もう一つには、互いに積極的に感謝の気持ちを持ち合える時、“因む心”(関わり合い頼り合い支え合う心)である[恩]によって結ばれる[信頼関係]が出来始めるからです。
自分をその存在によって強くし伸ばしてくれた仲間が、その事によって彼・彼女自身の存在価値を感じて[自信]を深め、それ故に[恩]の気持ちを持ってくれれば、そのような関係が出来始めます。
そんな仲間が集まって、互いに高め合いながら結束を強めていけると良い、と思います。

そして、この事に付随して、もう一つ忘れてほしくないのは、完全な意味で自分次第である物は[意志]だけだ、と云う事です。
能力は、現実世界の前では無力であり、時間と空間に制限され、運に翻弄されます。
言い換えれば、或る一つの結果を予定した期限に必ず絶対に実現する、と云う事は人間には不可能ですが、その結果を出せるまで頑張る、と云う事は可能だ、と云う事です。
ですから、能力に拘るのは馬鹿馬鹿しく、余りにそれに拘れば現実から乖離した思い込み・自己欺瞞に陥るだけであって、人間が真に価値を置くべきなのは[意志]だ、と私は考えています。
私の見方では、[学力]も含め能力は、[意志]に従属するべき物です。
そうであってこそ、すんなり思い通りに行かない事が有っても、信号待ちと同じ程度の軽いハプニングと見做す事が出来ます。
そして、向こうから歩いてくる友達が赤信号に阻まれて真っ直ぐ歩いてこられない事に苛立つのではなく、横断歩道を挟んで手を振り合ったり、「あ!あの服、こないだ一緒に買物に行った時に買った服だ!」と気付いたり、「髪切ったの気が付かないの!?」と怒られるのを未然に防いだり(笑)して、ハプニングを楽しむ事も出来るのです。
能力に過度に(現実世界と対立する程に)執着するのではなく、[意志]と[恩]の価値をこれからもずっと知っていってほしい、と思います。

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